続・人間の話をしますよー。

さて、顕微授精のお話の続きです。

これまでに出て来た用語、
人工授精、体外受精、顕微授精の違いを書いておきますと。
あ、金額も書いちゃおうかね。(あくまで東京歯科大のリプロ科のものですよ)

まず、不妊治療を始める前段階の検査にトータル20万円くらい。

人工授精=2万円くらい。
遠心分離機にかけて洗浄した精子を、
細い注射器のようなもので子宮に注入する。
1分くらいで処置できる、自然妊娠に近い形。
精子の量が足りなくて、凍結する場合は、凍結1回¥3500。安い!

体外受精=50万円くらい。
採卵手術によって採卵した卵子いくつかをシャーレに置いて、
洗浄した精子を適量を振りかける。
あとは精子が自分の力で「アムロ、行きます!」といって、卵子の殻をやぶって受精する。
その後、分割(細胞分裂)を確認して、子宮に戻す。

顕微授精=55万円くらい。これが現在の日本の最高医療(公には)だそう。
「もし、顕微授精がダメだったら、他に何か方法はあるのですか?」
と聞いたら「残念ながらありません」とのこと。あらあら。

採卵した卵をシャーレに入れる、洗浄した精子を使う、までは体外受精と同じ。
顕微授精のスゴイのはここから!

卵子1個をホールディングし、良く運動する形の良い精子1匹のみを選んで、
注射器のようなもので捕まえホールディングして、卵子に突き刺し、注入。
つまり、必ず授精させる、ということ。

卵の大きさ100ミクロン(どれくらいかよくわかりませんが)に大して、
7ミクロンの針が刺さるので、卵にとってはもの凄いストレスになるということ。
(自然妊娠の場合は、針なんて刺さないですからね)
なので、胚培養士さんは、とっても慎重に素早くそれらをやるらしいです。

酸素濃度も、普段私たちが暮らしている20%程度の濃度に対して
5%の透明な箱のようなケースの中でやるそうです。
顕微鏡で見ながら、ですね。

すごいです。
頭が下がります。
これらを知るまで、体外受精・顕微授精、すっごい高い!!
って思っていましたけど、そりゃお金、かかりますよね。
もちろん保険がきかないので、負担する金額が大きいわけですが。。
(もっと不妊治療にお金を出しては頂けませんかねえ。お国の方々)

ちなみに、平成22年度現在の助成金では、いろいろ書類を出すと15万円戻ってきます。
東京も千葉も同じ金額のようです。

せっかくなので、その後の細胞分裂に関しても少し、書こうかな。

授精した卵はすぐに、2つ、4つ、8つ、と分割していきます。
分割しないものもあります。
分割していきながら、それぞれの細胞の大きさが均等だと良し。
スピードが早いほど良い、ということもあるようです。
不均等に分割し、かつ「フラグメント」という余計な粒ツブができてしまうと、
グレードはどんどん下がっていきます。
ベストがグレード1で妊娠率30〜40%。グレード5で妊娠率0%。

もし良い胚が沢山採れたら、凍結して、排卵周期にまた胚移植することもできます。
その場合、解凍&胚移植のセットで5万円。

さて。
私たちは、胚移植の前に採卵室で、シャーレに書かれた自分の名前を確認し、
中をモニタで見せてもらいました。
(おそらく超高性能のCCDカメラで映している。卵子は0.1ミリ以下らしいですから)

おおおおおーーー!
こ、これが!受精卵!!!!
で、でも、なんとなく、現実味が、ない。
いや、でも、すごい。
撮影した写真です。4個写っています。
一番下の胚が、7分割まで到達した、フラグメントの少ない、グレード2の胚。
胚移植した胚です。
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私たちは顔を見合わせたり、話を聞き、うなずきながら、
ちょっと興奮気味になっていたと思います。
だって、だって、この「受精」の段階まで、自分たちでは、到達できないわけですから!

医師先生と、胚培養士の(お二人とも女性でした)説明を聞きます。
一つ一つ、受精卵をモニタで差しながら、
「これは、残念ながら分割していません。
これは分割していますが、ツブツブが沢山出来てしまっているので、
成長しなかったり、凍結しても解凍するときに、壊れてしまう可能性の方が高いです」
などなど。

2個は全く分割していませんでした。。
他の5個は分割するも、不均等でフラグメントが沢山できていました。
とはいえ、すっごく詳しく指差しで説明されないと、
素人目には、わからないくらいなのですが。
7分割、と言われて「ああ、そうかなあ?」くらいの。

私たちの卵子は前に書いたように、9個採れて、1個が中身がない状態、
残り8個を受精させ、グレード2のものが1個、でした。
残りの7個は凍結も、おそらくそれ以上の成長もできない受精卵でした。
9個採れたうち、1個の胚ですから、確率は高くはないですね。

「写真をとってもいいですか?」と聞くと、
先生方は一瞬戸惑った様子でしたが、「いいですよ」と画像を拡大してくれました。

なんかね、もしかしたら、このまま着床できるかもしれないし、
でも、すでにダメだった卵たちもいるわけで、愛おしいというかね。
ダメだったコたちもきっと頑張ったんだと思うんですよ。

撮影しているワタシに「神秘的ですよね」って先生がおっしゃってましたが、
ああ、こういうのを「神秘的」って言うんだなあ、ってね。
予想できないこと、まだまだ解明できないことが沢山あるわけですよ。
生命の誕生ってね。
世界最初のイギリスでの体外受精で生まれた方が、やっと30代になったばかり。
それくらいの浅い歴史なんですって。

そして、最後に「現在34歳ですから、この胚を1個、移植しようと思いますが、
よろしいですか?」と言われました。
この病院では35歳以下は多胎の危険性を考慮して、
胚を戻すのは1個、という原則になっています。

ワタシと夫は「はい!」と即答。

「じゃ、移植していきます」と、移植は人工授精と同じくらいの簡単な処置。
麻酔もなしで、痛みもなし。5分くらいで終了。
その後、30分横になったまま安静で、無事に胚移植が、終わりました。

今回のワタシたちのケース、1個しか胚移植できる胚(受精卵)が出来なかったのですが、
もし、状態の良い受精卵が他にあれば、
凍結して、次の周期に胚移植できるチャンスがあったわけです。
それが一つもなかったのは、残念でした。

でも、それはそれ。仕方ないこと。

1個でも正常な受精卵が移植できたのだから、ほんとにホッとしています。
(グレード2という、着床20〜30%のものですが)

終わってみると(まだか)なんだか多くの人達に感謝したくなりました。
スッキリしちゃったんですね。

そんなわけで、いつも全力で支えてくれる夫に感謝。
毎回、病院に送り迎えしてくれる彼に、
「男性は待っているだけで、歯がゆくない?」と聞いたら
「ここまで来たら、確かになーんにも出来ないからねえ。
でも出来ることが一つだけある!希望を持つこと。
希望を持てば、コンディションも良くなる気がする」とマジメな顔で言われた時は、
おお、我が夫よ!と思いましたよ。

そして、しょっちゅう休みをとらなきゃいけないのに、
その環境を温かく作ってくれた会社にも、
話を聞いてくれた友達にも、
ティムプーのMimiさんとTimさんにも。
Timさんはスイスに戻るときハグでGood luck!と言ってくれたね!
妹たち、両方の両親、何かと感謝。

それと、毎回ワタシたちが病院から帰って来た時に、何事もなかったかのように
暴れて走り回り、本棚に隠れて、眠って、かわいい姿で和ませてくれる猫たちに感謝。
キミたちの奔放さには救われた。

あのねー、ほんとは34歳の誕生日のとき、赤ちゃん欲しかったんですよ。
きっと。
まあ、誕生日に関わらず、ずーっと欲しかったんだな。

だけど、できないってわかって、でも、どうしても「なにか」を育てたかった。
それで「子猫」って言ったワタシの気持ちを汲んでくれた夫(おそらく)と、
エコーを育て始めたわけですが、エコーをもらってほんとに良かった。

エコーが来た頃、ちょうど、顕微授精の高度医療について、
本格的に理解し始めて(というより体で覚えて、だな)いった時期だったのですが、
生まれたてで、死にかけたエコーが復活して、体重が増えて行く様子は、
そういった意味で、なんていうか、「生まれる」ことのお手本でした。

あと、二番目の妹の娘、姪っ子のひかりちゃん。
彼女が成長して1歳を超えて、一緒に遊べるようになったりして、
嬉しかったし、楽しかった。「子供、いいなあ!」と思いました。
彼女の存在もワタシたちを勇気づけてくれたなあ。

さてさて。
病院から家に戻ると、ポストに八戸の母から手紙が届いていました。
母は花屋を営んでおり、画家であり、詩人でもあるハイパーな人です。
母にはもちろん、ちょくちょく進捗を報告しています。

開けると、こんな言葉が。
そして、なぜか結婚してすぐの頃、八戸の実家に行った時の私たちの写真が。
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”科学”にかかわれて、おめでとう。
試みるだけでも偉いです。
近くに住んでたら、ごちそうをご一緒したい気持ちです。
ごきげんよう。悦子


あーー、なんて素敵な人だろう!!と、心から思いました。
母よ、あなたはさすがです。
夫と読んでいたら、泣けてきました。

私たちの周りの全ての人が、応援してくれていますが、
こんな言葉で激励してくれる人は、あなただけです。

そう思うと、同封されている4年前くらいの私たちの写真も、
なんだか意味があるような。(ないような。笑)
そういう人なんです。悦子さんは。
でも、わかるよ。なんとなく。

「仲良くね」
そんなところでしょう?
いや、もしかしたら「良い写真だから」
それだけかも。笑。

大丈夫ですよ。
私たちは、元気に仲良く子供を作ろうとしていますよ。
高度医療の力を借りてね。

でも、みなさま。
もし2週間後、ダメだったときは、どうか全力でなぐさめてください。笑。
そこから先は、また何か考えたいと思います。

これから不妊治療を始めようかな、という方。
今や、子猫の育て方より、顕微授精に詳しいワタシです。
ここで、はしょった分もたくさんあります。
どうぞ、なんでも聞いて下さい。

では、最後に、今日の本棚の子猫。
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水鉢を共有しそうになった、一瞬の和みムードの後も、
結局は相容れなかった二匹。
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エコーが登れない高さから見下ろすファズ。でした!
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Commented by いくらパパ at 2010-06-01 22:35 x
こんばんわ、初めまして。いくらパパと申します。
おなじニコハハさんのところから、大切な命を授かってきたものです。

今まで楽しく拝見させていただいておりました。ハイセンスなレイアウトと知的な文章には感服いたします。
エコーちゃん大きくなりましたね。良い環境で育てばよい子猫に育つという見本ですね。うちのは・・・。

初コメントが上記ブログに対してというのもアレだったのですが、このような状況下で子猫を育ていらっしゃることにも感動いたしました。
ただでさえご自身が不安な時なのに、よりによって手のかかる子猫とは(^^;
ですがエコーちゃんがいたから乗り切れたことも幾多もあったようにお見受けします。あっもちろんファズさんも(^^
猫さんという存在は人間のパワーにもなるし、なにより家族ですよね。

飼い主さんのところに新しい命が授かることをお祈りしております。お体お大事になさってください。


Commented by サワ at 2010-06-02 00:23 x
はじめまして。サワと申します。

ご主人がワイルドマイルドでギターを弾いていらっしゃた時、ライブに行ったりCDを買ったりしていた者です。

私も子どもを授かりたいと思い、
基礎体温に一喜一憂した経験があります。

お母様のお手紙、素敵ですね。
お二人の写真も素敵です。

新しい命、授かりますように祈っています。


Commented by 仮母 at 2010-06-02 15:10 x
エコーちゃんの弟か妹が出来ます様に…。
Commented by mizuiropinkchan3 at 2010-06-02 23:20
>いくらパパさま
こんにちは!読んで下さってありがとうございます。
この内容に最初にコメントを下さって、嬉しくホッと致しました。
お褒めいただき、とっても恐縮しております。
良いニュースがお知らせできるといいなあ。

いくらちゃんのブログ、夫と大爆笑で拝見いたしました!
いくら御殿、すごいです!障子の破り方も、あっぱれ!
いくらちゃん、可愛がられてしあわせなコですね。
これからも、可愛いいくらちゃんの様子を見られるのを、楽しみにしています。

>サワさま。
こんにちは!夫のブログにコメントを下さっていた方ですね!
いつもありがとうございます。
確か以前、サワさんご自身の娘さんのことを
「生まれる前から知っているような気がします」というようなことを書かれていて、
なんだか感動したのです。
そんな素敵なことが、私たちにもあるといいな。

いつかぜひ、お子さんとライブを見に遊びにいらして下さいね!

>仮母さま
ありがとうございます。
なるほど、もし赤ちゃんができたら、エコーはお兄さんに、
ファズはお姉さんになるのですねえ。
あっという間に。笑。
楽しいニュースが伝えられますように。
Commented at 2010-06-03 00:53 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
by mizuiropinkchan3 | 2010-06-01 21:47 | 不妊治療 | Comments(5)

生後2週間の子猫を育てる800gまでの猫道、改め1.5kgまでの猫道、改め行けるところまで。


by mizuiropinkchan3